馬の世界でも薬物摂取が問題になっています。
JRA(日本中央競馬会)が152頭の競走馬を出走取り消しとすることを決めましたね。
今日のレースと明日の重賞2鞍の競走除外についてです。 pic.twitter.com/DdeKvKc5rV
— ラジオ日本「土曜・日曜競馬実況中継」 (@keiba1422) 2019年6月14日
6月14日、15日、16日に函館、東京、阪神で出走予定だった競走馬について、
摂取していたとみられるサプリメントから禁止薬物「テオブロミン」が検出されたのです。
「禁止薬物」とはJRAが定めている競馬施行規程第132条に規定された薬物のことです。
禁止薬物は馬の競走能力を一時的に高めるような強い成分が含まれることも多く、
今回の禁止薬物「テオブロミン」も競走馬への副作用や悪影響が気になりますよね。
「テオブロミン」は競走馬に悪い副作用をもたらす
「テオブロミン」という成分に聞き馴染みのある方はほとんどいないと思いますが、
実はカカオやチョコレートに入っているカフェインのことで、私たち人間には馴染みのある成分です。
テオブロミンとは︖
ココアやチョコレートに最も多く含まれるアルカロイドで、
カフェインやテオフィリンと 同じ「キサンチン誘導体」。
カフェインやテオフィリンの仲間です。
⾎管拡張薬、中枢神経刺激薬、利尿薬としても⽤いられています。
カフェインごときでなぜそんなに問題になるの?と思ってしまいたくなりますが、同じ成分でもヒトと馬では影響の出方が全く異なります。
今回問題の禁止薬物「テオブロミン」については、欧州食品安全機関(EFSA)が、動物用飼料中の望ましくない物質として科学的意見書を公表しています(2008年)。
馬に対する悪影響については以下のとおりです。
馬はテオブロミンに対する感受性が特に高く、肝臓及び甲状腺に影響を受け、豚は発育遅延、下痢及び嗜眠状態を示した。
出典:efsa.europa.eu
馬は非常に繊細な動物ですから、テオブロミンを摂取することによる副作用も出やすいということなのでしょう。
豚にあっては発育が遅くなったり、下痢や軽い意識障害を起こしたりするということですから、動物に対する副作用が強いことが伺えますね。
今回の問題では152頭の競走馬が「テオブロミン」を含む飼料を摂取した可能性があるとのことでしたから、馬の健康や状態に大きな影響がないことを祈るばかりです。
禁止薬物「テオブロミン」がサプリメント「グリーンカル」に含まれていた理由
問題となった「グリーンカル」は海外からの輸⼊品だということです。
飼料は競走馬理化学研究所の検査を受けてから出回るのが当たり前となっているので、
出走停止を受けた馬の厩舎側はこの禁止薬物が入っているとは知らずに使用してしまったようです。
さらに「グリーンカル」という名前のサプリメントは、⽇本でもJRAファシリティーズ株式会社などのホームページでも紹介されているごく一般的なサプリメントだったために、
購入する側や使用する側もなんの疑問も抱かずに与えてしまっていたのでしょう。
実際に「グリーンカル」は美浦や栗東トレーニングセンター内の競走馬向けの薬局に一般的に売られているものなのだそうです。
こうした今回の状況を整理すると、問題発生までの背景には以下のような経緯があるのではないでしょうか?
JRAが海外メーカーからグリーンカルを購入
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競走馬理化学研究所がグリーンカルを検査
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JRAが検査結果出る前に各厩舎へ販売開始
↓
競走馬理化学研究所の検査結果で禁止薬物が発覚
↓
JRAがグリーンカル購入厩舎の管理馬全頭抹消
JRAが152頭もの出走停止を公表するということは、もちろん公平性の観点からの決定でもあるわけですが、JRA側にも非があったことを認識しているからかもしれません。
【まとめ】競走馬に悪い副作用があるテオブロミン
今回の152頭の取り消しの影響は、1競走あたり約2頭が出走取り消しに相当するため、激震が走っています。
「テオブロミン」が含まれているサプリメント「グリーンカル」を使用していた調教師の方は『袋には禁止薬物が入っていない旨が明記されている。ありえない』と語っており、
多くの関係者がなぜこんな事態になってしまったのか…と頭を抱えていることでしょう。
今後の出走予定馬については6月15・16日の間に血液検査が行われるということで、素早い事態の鎮静化を望みます。